バス停

バス停

ある日、知らないおじさんから話しかけられた。
「この携帯、機内モードになって解除出来なくなったから解除してー」
この手の話は困る。なんせ、おじさんのはスマホ、その時私の携帯はまだガラケーだったから。仕方なくガラケーを取り出しおじさんに言った。
「すみません。私これなんで、スマホの使い方わからないんです」
落胆するおじさん。すぐにバス停にいる他の人を見渡し、無言でため息をつく。おじさんよりかなり年上そうな人が2人いるだけ。
目の前の道路の真向かいにガソリンスタンドがある。そこに若者らしき店員さんを見つけたおじさんは、引き寄せられるようにそのまま道路に飛び出した。
「危ない!」
私の声に、我に返ったおじさん。スマホのことしか頭になかったようで、車が来ているのに全然気づいていなかった。はやる気持ちを抑え、左右をきちんと確認し道路を渡ったおじさん。私は来たバスに乗り、ガソリンスタンドの方を見た。無事に機内モードを解除出来たようです。うれしそうに戻ってくるおじさんの顔がありました。

別の日、知らない年配のおじさんから声をかけられた。
「すみません、飲み屋のお姉ちゃんにお礼のメールしたいから、打ってくれる?」
そう言って、私にガラケーの携帯を差し出した。
「はい・・・」
「言うから打ってね。えっとー、『昨日は楽しかったです。・・・』」
純粋な他人の恋愛をのぞき見しているような気恥ずかしさにおそわれながら、言われたとおりに必死で打ちました。
「じゃあ、送信しますね」
「ありがとー!」
去っていく年配のおじさん。

バス停って、バスを待つだけの場所ではないみたいです。

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